白髪が生える仕組み【メカニズム】
白髪がない時は他人事ですが、いざ生えてくると仕組みや原因について調べ始める人は多いと思います。
研究論文などを参考にさせて頂きながら、分かりやすく解説していきます。
髪の毛を作っている細胞は、大きく分けて下記の2種類です。
そして、髪に色がつくまでの流れは下記になります。
この工程のどこかに不具合がおき、メラニンがない状態で作られた髪が白髪になります。
これが、白髪が生えてくる仕組みです。
不具合によっては、改善することで白髪から黒髪に戻る事もあります。
具体的にどういった不具合により白髪が生えてしまうのか、そのメカニズムを解説します。
17型コラーゲンが不足
17型コラーゲンは良く耳にするコラーゲンとは異なり、膜貫通性という性質があります。
毛包(髪を作る場所)に存在する細胞表面に結合した時だけ効果が表れる、特殊なコラーゲンです。
飲食や頭皮塗布などで、17型コラーゲンを直接補えるかは分かっていません。
17型コラーゲンは、下記の働きをしています。
TGF-βとは、細胞の働きをコントロールしている分泌性シグナルタンパク質の一種です。
メラニンを作る根源の色素幹細胞は、毛包幹細胞から出るTGF-βシグナルによって機能しています。
そのため、17型コラーゲンが不足してTGF-βシグナルが出なくなると、白髪になるという事です。
17型コラーゲンを欠損するマウスでは、毛包幹細胞におけるTGF-βの発現が早期から失われ、隣接して存在する色素幹細胞におけるTGF-βシグナルが入らなくなるために色素幹細胞を維持できなくなり若白髪になること、毛包幹細胞を含む基底細胞でのみ17型コラーゲンを発現させると一連の異常がすべて回復することが判明しました。
出典元:毛包幹細胞が色素幹細胞を維持する仕組みを解明 | 国立大学法人 東京医科歯科大学
また、17型コラーゲンには、毛包幹細胞をバルジ領域に繋ぎとめる働きがあります。
これがとても重要で、毛包幹細胞はバルジ領域から離れてしまうと機能しません。
毛母細胞に分化しなくなり、髪の毛自体が作られなくなってしまうという事です。
離れた後は角化細胞(表皮の中にある細胞)となり、肌のターンオーバーで外に剥がれ落ちます。
そのため、17型コラーゲンが不足して白髪になった場合、その状態が続くと髪自体が生えなくなります。
色素幹細胞が働かなくなり消滅する
メラニンを作る根源の色素幹細胞が消滅してしまった場合、その白髪を黒髪に戻すことはできません。
色素幹細胞は自身のコピーであるクローンを自ら作る事で、数を維持しているからです。
幹細胞の寿命は約1~2週間ほどと短いです。
そのため、何らかの理由で自己複製能を行わなくなると、寿命をむかえて徐々に減っていきます。
一度でも数が0になってしまうと、現在の医学では復活させる事はできません。
MITF遺伝子が減少
MITFとは「Microphthalmia associated Transcription Factor」の略で、色素細胞の中に存在します。
年齢を重ねる毎に、色素細胞で発現するMITF遺伝子の数が減っていく事がわかっています。
その結果、働きも弱まっていき、色素細胞がメラニンを作らなくなることで白髪になります。
これらにより、MITF遺伝子の発現数を増やせるという研究結果があります。
メラニンが出来る過程に不具合
色素細胞が作るメラニンは「ユーメラニン」と「フェオメラニン」の2種類です。
このメラニン2種類の量やバランスで、地毛の色が決まります。
メラニンが出来るまで、色素細胞の中で下記のようなことが起こっています。
ここからユーメラニンとフェオメラニンで、作られるまでの工程が分岐します。
ユーメラニンが出来る過程
- ドーパキノンがロイコドーパクロム→ドーパクロムへ時間経過で変化
- ドーパクロムが酵素であるTRP2(DCT)の作用を受けるとDHICA、受けないとDHIに変化
- DHICAとDHIが酵素であるTRP1の作用を受けてユーメラニンが完成
フェオメラニンが出来る過程
- ドーパキノンとシスティンが反応する事でシスティニルドーパへ変化
- システィニルドーパが時間経過でフェオメラニンが完成
これらの工程のどこかに不具合が起き、メラニンが作られない事で白髪になります。
白髪が急に増える原因
上で白髪になる仕組みを解説しましたが、その原因となる要因や行動などを解説していきます。
男性と女性で生え始めが違う
男性と女性とでは、白髪が気になりだす年齢に違いがあるようです。
下記は、株式会社リクルートライフスタイルが行った「白髪・グレイヘアに関する意識調査2020」の結果です。
出典元:株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパービューティーアカデミー-白髪・グレイヘアに関する意識調査2020
これに当てはまる、約5万人のインターネット調査の結果になります。
「男性が30代後半」「女性が40代前半」と、男性の方が白髪を気にし始める年齢が早いようです。
この差の明確な原因はわかりませんが、頭髪ケアへの関心の差などが考えられるかと思います。
若い10代20代と30代40代の違い
男女で少し違いがありますが、白髪が気になりだす平均年齢は30代後半以降です。
そのため、それよりも若い10代や20代で生えている場合は「若白髪」に分類されます。
若い人と30代後半以降でも、白髪が生える仕組み自体は同じです。
しかし、白髪の増えやすさは大きく異なります。
これらは、髪色を作る細胞が正常に働くためのサポートをしており、加齢することで減少していきます。
そのため、30代40代と年齢を重ねていくにつれ、白髪が増えやすくなっていきます。
他に症状があれば病気の警告かも
白髪は多くの場合、老化現象として生えてきます。
しかし、白髪になるのと同時に他の症状がある場合、病気の警告かもしれません。
例として、下記などの病気があげられます。
このように、白髪の他に何か症状がある場合は、病気の警告かもしれません。
ストレス
ストレスを受けた時、体内で下記のような事が起きています。
- 活性酸素が増加
- ノルアドレナリン(神経伝達物質)が放出
体内に活性酸素が増加すると、細胞に酸化ダメージを与えてしまいます。
この酸化ダメージは、細胞が正常に働かなくなったり劣化(老化)してしまう原因です。
また、ノルアドレナリンは、メラニン生成の根源となる色素幹細胞を減少させる原因になります。
下記は、2020年1月に国際的な総合科学ジャーナル「Nature」に記載された論文です。
these results indicate that noradrenaline released from active sympathetic neurons triggers MeSC depletion
【Google翻訳】これらの結果は、活動的な交感神経ニューロンから放出されたノルアドレナリンがMeSC枯渇を引き起こすことを示しています
出典元:How the stress of fight or flight turns hair white-nature
MeSCとは色素幹細胞の事です。
色素幹細胞はメラニンを作る細胞に分化するのと同時に、自らのクローンを生成して数を維持しています。
しかし、ノルアドレナリンの影響を受けると、クローンを作らなくなってしまいます。
幹細胞の寿命は1~2週間と短いため、その状態のまま時間が経過すると数が減っていくという事です。
上でも解説しましたが、色素幹細胞の数が1度でも0になると復活することはありません。
紫外線
頭皮に紫外線を浴びると、細胞を劣化(老化)させる活性酸素が増えてしまいます。
頭皮は髪によって守られてはいますが、薄毛の場所や分け目の部分などがあるため隙間を0にする事はできません。
そのため、分け目や生え際などに白髪が生えやすいのは、紫外線が原因として考えられます。
対策として、髪と頭皮の両方に使える日焼け止めがおすすめです。
栄養不足
細胞がメラニンを作るため、とくに重要となるのが下記の栄養素です。
それぞれの働きや理由などは、下記のページで解説しています。
血流が悪い
食事から吸収された栄養は、血液に乗ってメラニンを作っている細胞に届けられます。
そのため、栄養を十分とっていても血流が悪いと、細胞へスムーズに渡す事ができなくなります。
血流が悪くなる原因は、主に下記の5つです。
定期的な運動や、筋肉のコリをほぐすマッサージが予防になります。
睡眠の質が悪い
睡眠の質が良いほど、下記の2つのホルモンが多く分泌されます。
- 成長ホルモン
- 新陳代謝を活発にする
- メラトニン
- 強力な抗酸化作用(活性酸素を減らす)がある
分化して新しく細胞が生まれ変わりながら、髪色のメラニンは作られています。
そのため、新陳代謝で髪色が作られているとも言えます。
成長ホルモンはその働きを活発にするため、とても重要です。
また、メラトニンには強力な抗酸化作用があるため、髪に関わる細胞の劣化(老化)を防いでくれます。
セルフカラー
ヘアカラー薬剤には、細胞に酸化ダメージを与えてしまう過酸化水素が含まれています。
とくにセルフカラーは影響が大きいです。
また、こういったヘアカラー薬剤の成分は、染めたあと頭髪に必ず残留します。
自然に抜けるまで時間が掛かるため、カラー後の2~3間程は後処理剤でのケアをすべきです。
残留薬剤はヘアカラーの色落ち原因にもなるため、除去処理はとても重要です。
遺伝
白髪になる事と強い関連性がある遺伝子は見つかっています。
そのため、白髪は遺伝の影響を受けると言えます。
しかし、これらが子供に遺伝してどれだけの影響が出るかなど、詳しい事までは分かっていません。
また、白髪の原因を完璧に調べる事はできないため、生えても遺伝によるものなのか判断することは不可能です。
喫煙
タバコを吸う事が白髪の原因になる理由は、下記のようなものがあります。
ビタミンには抗酸化作用があるとされ、細胞の劣化(老化)を防いでくれます。
ただでさえ日本人はビタミンが不足しているのに、喫煙によってさらに消費してしまいます。
また、細胞が働くためには、栄養だけでなく酸素も必要です。
飲酒
肝臓がアルコールを分解するときに、大量に活性酸素が増えてしまいます。
- アルコール度数が高い
- アルコールに弱い人(分解が苦手)
こういった場合、さらに活性酸素の量を増加させてしまいます。
そのため、酔えば酔うほど細胞が劣化(老化)しやすく、白髪の原因になるという事です。
また、活性酸素が増えると、それを減らすために抗酸化酵素も体内で作られます。
しかし、加齢によって抗酸化酵素の生成量が減っていきます。
白髪を回復して黒髪に戻すための条件
一回白髪になってしまっても、黒髪に戻ることはあります。
しかし、黒髪に戻すためには条件があります。
上でも解説しましたが、色素幹細胞の数が1回でも0になると復活させる事はできません。
また、色素幹細胞が残っているか、自分で調べる事もできません。
そのため、黒髪に戻すことが出来る白髪なのか、判断することは不可能です。
判断できなくても白髪の原因になりそうな事を改善することは、増やさないための予防になります。
白髪を抜くのは治る可能性を減らす
髪は毛包に、毛根鞘(もうこんしょう)という接着剤のような物でくっついています。
そのため、白髪を抜くと接着力分のダメージを、髪に関係する細胞などに与えてしまう可能性があります。
白髪を抜くメリットやデメリットは、下記で詳しく解説しています。
>>白髪を抜くメリットとデメリットとは?【決めるのはアナタ】
また、白髪を抜くと毛包炎を起こす可能性があり、細胞にとっては悪影響です。
もし黒髪に回復できる白髪だった場合、その可能性を減らす事に繋がります。
まとめ
髪に色がつくまでの工程に不具合がおき、メラニンがない状態で作られた髪が白髪になります。
これが白髪が生える仕組みです。
不具合がおきる原因は複数考えられ、場合によって改善できれば黒髪に戻すこともできます。
細胞の状態を自分で調べる事はできませんが、原因を改善することは白髪を増やさない予防になります。